シロクマのリカントのぬいぐるみ

【データ上は〈ぬいぐるみ：Sサイズ〉として扱うもの】
エミーお手製のぬいぐるみ。ギリギリ手乗りサイズ。フェルト製でふわふわ。
イーヴァル狂闘術の開祖イーヴァルを模しているらしい。
「本物のイーヴァル様はきっともっとかっこいいけど、でもまあ、まずはみんなに知ってもらうところからよね」

ファイター技能、エンハンサー技能、全力攻撃、防具習熟

行商人時代に隊商の護衛から習う。彼女の高い身体能力と天賦の才能は、児戯として捨て置くには勿体無いものであり、両親も自衛に役立つからと学ぶことを快諾した。
ただ、彼女が時折自らを顧みず行う大振りの一撃については彼らも思う所があったようで、せめてきちんと受け止められるようにと防具の扱い方の指導を受けさせた。この指導が後に彼女の命を救った要素の一つであることは疑いようもない。

スカウト技能、アルケミスト技能

こちらも主に隊商の護衛から習得する。斥候の技術は町から町へ売り歩く隊商にとっても重宝されるものであり、実践の機会も多かった。
アルケミスト技能については、売れ残った商品や端材の再利用として隊商内で共有されていた技術である。ただし感覚的な習得と実践が先立って、理論的な部分は学んでいないため、見習い程度しか扱えていない。

バトルダンサー技能、ドルイド技能、挑発攻撃、頑強

これらはすべて、ノーザンファング連山の氏族に匿われていた際に習得したものである。
彼女に、狂闘の術を学ぶ素質ーー大振りの一撃を恐れぬ勇猛さを見抜いた師範は、彼女の請いに応え、氏族の仲間たちと共に彼女を巡回隊に編成し連山内の蛮族退治や冬季の魔獣討伐などに連れ回した。
死地を幾度も潜り抜けた彼女の肉体はより頑健に成長し、より複雑な戦闘技術を行うことを可能にした。戦いの合間に行われた氏族の霊安の儀式は、彼女に精霊と語らう術を教えた。

長い冬が明ける。氏族の者以外は山を去る定めーー名残惜しくも下山する彼女に、師範は一つの技術を手ほどきした。彼の教えはすべて、見て学び、戦って学ぶものだった。故にこれは彼女が最初で最後の、直接指導を受けた時だった。
魂をも揺るがす咆哮は、己の戦意を奮い立たせ、武器を握る体に力を与える。同時に相手の意思を挫き、身も心も引き裂く一撃となる。初めて救われた時に、蛮族や魔獣と戦った時に……幾度となく見た技を、彼女はついに理解した。
「いつか、あたしもその境地に至りたく。及ばずとも、せめて修練を続けて参ります」
圧倒されたまま、しかし彼女は誓う。その闘志は折れず。
「いずれ、そなたもこの真髄を学ぶだろう。そなたも私と同じ、死地を生き延びた者なのだから」
獣の如き鋭い双眸で、彼は約束する。その信頼は違わず。
「ならば、必ず我が物にしてみせます。ただ、その頃には、私が撒いた種が多く芽生えているかもしれませんわ」
「構わない。父祖たる峰は訪れる者全てに試練を課すだろう。厳しい冬を生き残った者だけが力を得るのだ。そなたがそうであったように」
父祖の連山より下る雪解け水は、麓の大地を潤し恵みを与える。そしてやがて空に昇り、冷たき雪となって山に変化をもたらす。結局のところ、大いなる何者かの意思が介在するかのような、巨大な循環に過ぎないのだ。

彼女が教えを学んだという事実は、その技を外の者でも身につけることができるという証左である。
そして彼女が生き延び続け、冒険者として名を馳せたならば、その技が強力で有益なものであるという証明である。
故に彼女は戦う。それ自体が彼女のためであり、恩師とその大地のためであるから。